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実習のコミュニケーション学

CCS(クリニカル・クラークシップ)を勘違いしていませんか?正しい情報をお伝えします。

投稿日:2019年5月2日 更新日:

CCS(クリニカル・クラークシップ)のイメージ

あなたはCCS(クリニカル・クラークシップ)について、どんなイメージを持っていますか?

 

レポートがないので、学生さんの考えが浅くなる。

見学をしていただけでは、身につかない。

指導者の言い放しになる気がする。

そもそもCCSってなに?

 

多くの方に伺ってみたところ、このような回答が得られました。

2019年の5月現在、まだまだ多くの施設はCCSへ移行期間中となっています。

なので、積極的にCCSを導入しているところが未だに少なく、実際のCCSからはとてもかけ離れたイメージを持ってしまった人が存在します。

 

そこで、今回はCCSの正しい情報を広めるための知識を共有していきます。

 

 

CCS(クリニカル・クラークシップ)を勘違いしていませんか?

 

勘違い①CCSは見学実習である。

CCSは見学実習ではありません。

診療参加型の実習です。

 

理学療法実習における診療参加型実習とは、リハビリを患者様・セラピスト・学生のチームで行い、学生さんはそのリハビリの実体験を通して臨床能力を学んでいくものをさします。

 

そのため、学生さんにはリハビリの補助として加わっていただきます。

リハビリの補助を経験することで、学生さんは教科書的な知識だけでなく、臨床的な考え方や接し方などの机上では学ぶことのない知識をより身近に感じることができるのです。

 

どんなものかよりイメージしやすいように例を挙げると、、、

キャッチボールを通じてバランス練習をするリハビリを想像してみましょう。

 

バランス練習としてキャッチボールをする際に

「セラピストは介助を、学生さんはキャッチボール相手を」

とすると、患者様の能力が投球や捕球の際にバランスを崩してしまうリスクの高い方でも、リハビリのメニューとして取り入れることができます。

 

つまり、セラピストにとっては、一人ではリスクが大きすぎて選択肢に入れることができなかったメニューを取り入れられたり、1対1ではできなかったメニューを取り入れることもできます。

 

また、学生さんと一緒に運動してもらえれば、ある種の集団療法的な側面をももたらすことができます。

そのため、患者様にとっては、個別では味わうことのできない楽しさも感じながらリハビリを受けることができるのです。

 

学生さんはその中で指導者であるCE(臨床教育者:Clinical educator )からリハビリテーションを学び、引き出しを増やしていくのです。

 

 

 

 

 

勘違い②CCSになると成績が付けづらい。

CCSはレポートがないからといって、成績が付けづらいということはありません。

むしろ、CCSにすることで成績が付けやすくなったといえるでしょう。

 

従来型では成績の判断基準をレポートで行っていました。

しかし、レポートがでの成績判断の基準は画一されたものがなく、指導者の裁量で決まっていました。

そのため、指導者によってレポートの質が異なり、また、成績の幅も大きくなっていました。

 

そこでCCSでは、画一された成績判断として「チェックリスト」を用いることになっています。

「チェックリスト」は学生さんそれぞれの個人能力に合わせて、段階的にステップアップさせるための基準となります。

学生さんはこれらの段階を踏んでいかないと、実習中に経験できる範囲が増えていかない仕組みとなっています。

そのため、学生さんも成績が目で見え、今抱えている課題をみつけやすくなるので、自分の実習態度・習熟度を自己修正しやすくなるのです。

 

つまり、「チェックリスト」の存在により、CEと学生さんの双方にとって、今取り組むべき課題が明確になるため、お互いに納得できる成績がつけやすいくなるのです。

 

 

 

 

 

勘違い③CCSでは指導者の呼び方がスーパーバイザーである。

従来型では指導者のことをスーパーバイザー(SV)あるいはバイザーと呼んでいました。

しかし、CCSでは臨床教育者 or CE(Clinical Educator)と呼びます。

 

もともとスーパーバイザーは監督者とか、指導者のことを指していました。

しかし、実習は今、学校教育の一環として位置づけられているため、指導者というよりもCEと表現するのがよいのです。

 

また、小さなことかもしれませんが、SVからCEと敢えて呼び名を変えることで、学生の指導には”認定の資格が必要”といった認識を広めるためという目的もあるのかもしれませんね。

 

 

 

ここで話は脱線しますが、私にとっての重大な悩みが、、、

そう。

私の名前問題です。

現在「スーパーバイザー」を名乗っていますが、CCSとなればCEと名乗らざるを得ません。。。

なんといってもCE自体にまだまだ知名度がないため、CEと名前を変えて気づいてくれる方がどれだけいるのか、、、

悩ましいところなんです。

切実に。。。

どうしましょうか?????

 

 

 

 

・・・

 

さて、次へ進みましょう。

 

 

 

 

勘違い④CCSは新しい実習形態である。

CCSは新しい実習形態ではありません。

前々からある実習形態です。

 

すでに1990年代ごろから医師や歯科医師、薬剤師では導入されている方法です。

そのため実績もあり、従来型よりも優れている点が多数ある実習形態なのです。

ある論文では、”CCSは従来型よりも実習の進行がスムーズで,理学療法以外の知識に関しても幅広く学ぶ事ができることが示唆された”という結果がでています。

 

参考資料

クリニカルクラークシップ型臨床実習の利点と問題点:実習生に対するアンケート調査による検討(https://ci.nii.ac.jp/naid/130005417016/

 

 

むしろ、従来型の実習形態は法律にも抵触している箇所があるなど、不備がありすぎて多くの問題が露呈しています。

それの最悪の結果が、多くの方も目にしたであろう実習生の自死事件です。

CEにならなくとも、理学療法士の世界に住むのであれば必ず知っておかなければならない悲しい事件ですね。

 

以下のサイトにその全容が包み隠さず掲載されています。

ぜひ一度は目を通しておきましょう。

参考資料

理学療法士学生の臨床実習を問う(http://ptjisyu.com/index.html

 

 

 

 

 

勘違い⑤CCSでは学生の学習が浅くなる。

CCSに切り替わることで、学生さんの学習が浅くなることはありません

 

参考資料

クリニカルクラークシップ型臨床実習の利点と問題点:実習生に対するアンケート調査による検討(https://ci.nii.ac.jp/naid/130005417016/

この論文でも”症例理解や臨床推論能力に関しては従来型に劣ることが懸念されたが,結果的に有意差はなく,従来型と同様の結果となった”と結果が出ています。

 

おそらく、これはレポートがないから一症例に対する考え方の理解が深まらないのではないか?

という想いがあるのだと推測されます。

しかし、CEの考え方をそのまま模倣するため、むしろ症例理解が深まる可能性があります。

とはいえ、それはCEの腕次第であるということも懸念されます。

 

ただ、レポートだけが学習を深めるツールではないということだけは覚えておいてください。

確かに、”書く”ということは学習の定着を促すものであると科学的にも証明されています。

しかし、レポートをパソコンに”打ち込む”ということが学習の定着を促すものではないということも同時に証明されているのです。

そういった面からも、レポートの作成が学習を深めるために必要であるという考え方は否定されています。

 

 

 

 

 

勘違い⑥CCSにはまだ移行しないんでしょ?

もう2020年からCCSへ完全移行します。

 

対象は2020年に入学してきた学生さんです。

その学生さんの指導にはCEの認定資格が必要になりますので、ご注意ください。

このときまでに施設内に有資格者がいなければ、学校から実習地の対象外とされて学生さんの受け入れができなくなりますよ。

 

もう2年切っているのです。

もう間も無くですね。

 

それなのにCCSという言葉自体を知らない人も多い印象です。

正直やばいですよね。

でも、こうしてCCSのことに触れられているあなたは、まだ先駆者と言えるでしょう。

今のうちから備えておくと2020年以降、良いスタートが切れそうですね。

 

 

 

 

 

勘違い⑦CCSの指導者は若手に任せよう。

CCSでは有資格者のみがCEになることができます

CEとなるためのにはこれから実装される認定の資格が必要になりました。

 

CEとなるためには、

・臨床経験が5年以上のセラピストである。

・厚生労働省指定の「臨床実習指導者講習会」などを修了する。

といった条件が義務付けられています。

 

従来型ではSVは3年以上臨床経験のあるセラピストが”後輩育成のための練習”のような立ち位置として、当てられている風潮がありました。

しかし、5年以上の臨床経験者が条件となったことで、その風潮を一新させることができます。

5年以上のセラピストがCEを担当することで、より広くて深い知識で学生指導を行うことができ、それが理学療法士業界のベースアップに繋がると考えられるからです。

つまり、実習をセラピストの成長のためという立ち位置から、学生の成長という本来の立ち位置に戻す効果があると、私は考えています。

 

 

 

 

 

勘違い⑧CCSでは患者様のことを担当症例と呼ぶ。

CCSでは学生さんに患者様の担当を当てられることはありません。

そのため、CCSでは患者様のことを経験症例と表現します。

 

法令的にも、患者様の担当は理学療法士の有資格者であるCEとなります。

本来であればライセンスを持たない理学療法学生さんは患者様を受け持つことはできません。

そのため、従来型で行っている施設で患者様を実習生さんに担当させているところは法律違反です。

 

そのため、早急にCCSに切り替えて法律的に”白”と呼べる実習形態にする必要があるのです。

患者様の身を守るためにも。

学生さんの身を守るためにも。

自分の身を守るためにも。

 

 

 

 

勘違い⑨CCSより従来型の方がリスクが少ない

従来型と比べてCCSの方が圧倒的にリスクが少ないといえます。

 

リハビリ自体も、学生さんの手によって行われることによるリスクが大きいですよね。

セラピストがリハビリを行うのと、学生さんが見よう見まねで行うのとではリスク管理という面で圧倒的に差がでます。

 

もし、なにか事故(インシデント・アクシデント)があった場合、患者様はどんな想いになり・どんな不利益を被るのでしょうか?

学生さんはどう想うでしょうか?

誰がその責任を負うのでしょうか?

 

 

他にも上で挙げたように従来型では色々な面で法律に抵触します。

今回はあまり触れませんでしたが、ハラスメントに対する問題の多くは、従来型で行う『レポート』を介して行われることがわかっています。

 

また、その『レポート』を作成する時間が、法令で決まっている”一週間に45時間以内”という実習時間を大幅に延長している問題もあります。

これにより心身ともに健康を害することは疑いようもありませんよね。

そもそも法律に抵触しているので、論外なのですが。。。

 

このように、従来型がとてもリスクが高い実習形態であるのです。

従来型の実習は法律違反すらもたくさん指摘されているという事実を受け止めましょう。

 

我々はこんな危ない橋を渡っていたのです。

これを読んだ方はすぐにでもあなたの上司である責任者へ忠告しましょう。

あなただけでなく責任者の首が飛びます。

 

実習生の自死事件の結果は訴訟を起こした遺族側の全面勝訴です。

当然ですよね。

病院も学校も誰ひとり守れないのです。

法律違反を犯している時点で、”これまでの慣習である実習だから”という言い訳は通用しません。

まずは身内からでも身を守るための行動をしましょう。

 

 

 

 

最後に。

CCSはこのようなリスクも管理できながら、学生さんにとっても、指導者にとっても、もちろん患者様にとってもプラスになるような実習形態となっています。

規定に則って実施すれば、なんの問題もなく実施することができます。

何度も繰り返しますが、従来型の実習はリスクが大きすぎます。

 

 

そもそも『教育』は希望に溢れている芽を育てていくことが重要なことなのです。

マイナスなことばかり気にするような実習では、いい『教育』などできません。

 

おもいっきり学生さんの力を伸ばしていけるような環境をCCSで作っていきましょう。

そして、理学療法士業界を盛り上げていきましょう。

のらりくらりと生きながらえている重鎮たちを脅かす世代を一緒に育てていきませんか????

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

引き続き、『リハぶっく』をお楽しみください。

 

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