こんな未来を想像してみよう!
どうしたら臨床実習を充実できるのかがわかった!
「実習めんどくさいな、、、」
「実習に行きたくない、、、」
「なんで実習に行かなきゃいけないの?」
『臨床実習』
その言葉を聞くだけで、思わず愚痴をこぼしたくなりますよね 笑
とはいえ、臨床実習は理学療法士になるためには通らざるを得ない科目のひとつとなっています。
なので、せっかく長い間学ぶ機会が与えられるなら、少しでも充実した時間を過ごしたいですよね。
まして、それが自身の臨床へと大きな影響を及ぼすと感じているのであれば尚更です。
そこで、今回の記事ではこれから実習を受ける実習生さんに向けて、実習の目的を知るために実習形態であるCCS(クリニカル・クラーク・シップ)について解説していきます。
こんな方におすすめ!
- CCSってなにか知りたい!
- 実習に行く目的を知りたい!
- 実習を充実させる方法を知りたい!
もくじ
CCS(クリニカル・クラークシップ)とは?
早速、本題へ移っていきます。
CCSとは、日本理学療法士協会が教育ガイドラインで示した、臨床実習における教育形態です。
この教育形態の目的としては、学生が【見学-模倣-実践】を通じて臨床経験を積んでいくことが求められています。
CCSの歴史は古く、すでに医師・歯科医師・薬剤師の学生教育では、一昔前から導入されている教育形態です。
つまり、現段階で最もよいと言われている教育形態なのです。
これまで(2020年より前)の理学療法士実習は、この形態では行なっていませんでした。
従来の形態は時代に合わず、法に抵触してしまうことが指摘されたのです。
そのため、2020年度からの実習では今回の記事で取り上げているCCSという形態が適応されたのです。
このCCSは卒後教育・新人教育に近いものとなっているため、学生時代からこの教育形態に触れておくことで、新人研修が円滑に進むということにも一役買っています。
CCSってどうやるの?~目的について~
また、CCSは『診療参加型臨床実習』とも呼ばれます。
診療参加型の臨床実習なので、その名称通り、学生さんは『チーム医療の一員』として診療に参加して、臨床教育者(CE:Clinical Educator)の治療の補助をします。
こうして臨床経験を積んで、将来理学療法士になったときの”軸”を学んでいくのです。
補助として参加するといっても、はじめからそれができるわけがありませんから、前述したように
見学
模倣
実践
というステップを踏みながら理解を深めて、徐々に診療参加できるようにしていきます。
そのため、学生さんは実習に参加する上で、
患者様の
・これまで(病前生活~入院前)
・現状(入院中)
・これから(治療開始~退院後)
の情報やビジョンを臨床家と共有していきましょう。
この流れを時系列に沿って理解していくことで、セラピストとしてどういった思考回路で治療計画を立てているのかを把握することができます。
つまり、この3点を共有することで、実習生さんが実習で触れておきたい『臨床推論の軸』を知ることができるのです。
CCSの実際
ただ、実習においてその軸をどこまで深く聞き出すことができるのかどうかは、実習生とCEとの関係性によって大きく左右されます。
というのも、実習では最終的に学生さんが自らの考えをチームの一員として述べることができるようになることが期待されています。
つまり、臨床家の話を聞いているだけでは、最終到達目標まで達しないのです。
これはCCSが【アクティブラーニング】を目標としていることに起因します。
実は、ここが実習の”辛さ”を感じる大きなポイントの一つです。
学校で行っている授業は言ってしまえば、聞いているだけでも成り立つ”受け身の学び”です。
しかし、臨床では、患者様のために(自分のために)自ら行動することで情報を取りに行く”アクティブラーニング”が当たり前となります。
なので必然的に実習でも”アクティブラーニング”が当たり前となります。
この情報の取り方の切り替えができないと、実習生は困惑するのです。
そのため、CCSのことを知っておくと、心の準備ができますので、それだけ有利になるのです。
実習のコミュニケーション学のすすめ
知識も経験もないのに意見を求められても、なにも言えない。
けど、何か言わなければ実習を充実させることができない。
この差を埋めるのは急には難しいですね。
だからこそ、私が提唱している【実習のコミュニケーション学】がキーとなるのです。
CEとの関係性を深めることで、見学-模倣-実践というステップを踏む初期の段階で、たくさんCEから情報(知識・経験)を共有してもらうことができます。
そうすれば、なにか意見を求められた際は、これまでにCEから得られた情報をもとにすることで、意見を言える可能性が高くなるのです。
なにもないところから捻り出すよりも、なにかヒントがある中から見つけ出す方が圧倒的に楽ですよね。
ぜひこの記事を見たあなたは、CEとの関係性を深めて、たくさんのヒントをもらって実習を充実させていきましょう。
CCSになると、なにが変わるの?
CCSは従来型と比べると、そもそも教育方法が全く違います。
中でも印象的な変化を2つ挙げます。
①レポートがなくなった。
厳密に言うとCCSではレポートを作成する時間がほぼ取れないために、レポート作成ができなくなったのです。
というのも、CCSでは法律で実習に費やして良い時間が決められているため、自宅学習でレポートに費やす時間がないのです。
ただ、そもそも論として、法的にはレポートは必須のものではありません。
もともと、レポートは学校側がどんな実習を送ったのかを判断するためのひとつの材料でした。
しかし、CCSでは別のチェックリストとよばれるもので評価をすることになったために、それを作成する必要がなくなったのです。
②名称の変化。
・実習指導者(SV) ⇒ 臨床教育者(CE)
・担当症例 ⇒ 経験症例
これまではセラピストの立ち位置として学生を”指導する者”として扱っていました。
しかし、そもそも実習は学校の履修科目。
つまり指導ではなく、セラピストも教育をする”教師”のような役割を果たす必要があります。
また、これまでは”患者様を担当する”かのように、評価、治療などを行っていました。
しかし、CCSでは、臨床家と共に考えた治療方針に則った評価・治療を、臨床家の補助として経験することになります。
こうした違いは実習生にとっては大きな影響を与えることとなるので、頭の片隅に入れておくとよいでしょう。
CCSはどうやって学生の評価するの?
CCSでは学生さんの評価を『チェックシート』や『ポートフォリオ』にて行うことになります。
また、これらを作成・振り返りをする際の、CEとの『コミュニケーション』も大切な評価基準となっていきます。
指導する側にとって今まで評価の基準にしていた『レポート』。
この『レポート』がなくなることで、「大丈夫か?」「浅い実習にならないか?」などの不安に思う方も多いと言われています。
しかし、この『レポート』自体が従来型実習の最も良くないと言われるポイントだったのです。
学生さんが実習で学ぶべきは、”理学療法士”のこと。
”レポートを完成させる”ことではありませんからね。
それゆえに、より一層、アクティブラーニングが重視されていきます。
目的意識を持って、臨んでくださいね。
CCSのメリット・デメリット~従来型との比較~
ここまでCCSのことについて学んできましたが、最後にCCSと従来型の比較をまとめてきました。
CEの指導が学生中心から、患者中心になる。
CEはこれまでどおりの治療を続けることができます。
その中に、補助として学生さんについてもらうことで、一人ではできなかった治療を行うことができるようになります。
学生の負担が減る
レポート作成に当てる時間がなくなるので、理学療法の知識を付けることに集中できます。
従来型より臨床の引き出しが多くなる機会が増えます。
指導者の負担が減る
患者様の治療を段階的に伝えることだけに集中できます。
ただし、CEの質により学生さんの受ける教育の質が決まってしまう点には注意が必要です。
患者様の個人情報が守られる
レポートがない分、個人情報の持ち出しや流出などの可能性がなくなります。
CCSって本当にいいもの?
結論、理学療法士の臨床実習は従来型よりもCCSで行ったほうが、現代の教育として適していると言えます。
従来型の指導は、正直法律的に ”黒に近いグレーゾーン” で行われていたと言えます。
しかし、CCSではなんの疑いもなく ”白” と言える教育形態です。
最後に、理学療法士になるにあたって知っておきたい痛ましい事件を共有します。
実はこの事件を機に従来型の実習からCCSへと移行することになりました。
理学療法士として世に出るなら、必ず知っておきたい事件ですので、ぜひお読みください。
なんでCCSに変わったの?~きっかけであるとある事件について~
ある理学療法学生さんが実習で受けたハラスメントを理由に、自殺してしまったという悲しい事件がそもそものきっかけです。
これを機に、国会で理学療法学生が行う実習形態の問題が取り上げられ、CCSへの変更が決まったのです。
つまり、臨床で学生指導にあたる我々理学療法士が、二度とこのような事件を繰り返さないように、再発防止策としてCCSが導入されるのです。
ちなみにその事件は2019年4月8日に「和解」という形で決着しています。
全国の新聞でも掲載されるほどの大きなニュースとなりました。
「和解」とはいえ、内容としては一審判決で実習地の全面敗訴、高裁にて実習地が非を認めています。
詳細は『理学療法士学生の実習問題を問う 近畿リハビリテーション学院と辻クリニックに対する裁判を通じて考える』というサイト(http://www.ptjisyu.com/)にてご確認ください。
公判の全文が読めます。
指導にあたる理学療法士は必ず目を通しておきましょう。
”必ず” です。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
引き続き『リハぶっく』をお楽しみください。