理学療法士もリスク管理を再考すべきである。
ここ最近、医療事故に関する報道やモンスターペイシェントと呼ばれる方々の存在が、日本の医療従事者の肩身を狭くしているというニュースも多くなってきましたね。
肝炎の検査・治療せず、患者死亡 愛知県がんセンター( https://www.asahi.com/articles/ASMCF4WQZMCFOIPE014.html )2019年11月14日朝日新聞DIGITALより
がん見落としなど医療事故2件 名古屋市が公表( https://www.asahi.com/articles/ASMBR5RQGMBROIPE031.html )2019年10月24日朝日新聞DIGITALより
現代社会が抱える闇。
それは【他責的】な人の増加です。
情報が誰でも手軽に手に入る時代。
そのため、昔で言う”すごい人”とより身近に関わることができるようになりました。
その代償として、自己愛に満ち、しかし何もできない人が、自分とその人との”差”を埋めるために【他責的】になるといいます。
結果として、モンスターペイシェントが生まれ(社会的には引きこもりやモンスターペアレントも同様)、医療の本質が崩れてしまっているのです。
そんな時代だからこそ、今一度『リスク管理』について理学療法士も再考すべきではないか?
そう感じたので、学生さんには実習中に『リスク管理』について口酸っぱく指導するように意識しています。
これからの時代、理学療法士人生を謳歌するためには、この『リスク管理』という視点を欠かすことができないでしょう。
患者様の中には、昔のように、「あの医者に任せておけば大丈夫」という考えはありません。
患者様もそのご家族も、「この医者で本当に大丈夫なのか?」という疑いの目を常に持っています。
これは現場にいるからこそ、ひしひしと感じることかもしれません。
ということで、前置きが長くなりましたが、こんな経緯から『リハぶっく』では、この空気を少しでも身近に感じてもらうために、【リスク管理】と【国家試験対策】を掛け合わせて発信していくことになりました。
もちろん実習関係も同時に並行して行っていきますので、お楽しみにしていただけると幸いです。
月曜日からちょっと重たい話を…
『理学療法士』と『死』
『理学療法士』と『事故』
学生さんはどのくらい関連性があると思いますか?
『理学療法士』といえば、
"リハビリを提供して機能向上"のイメージが強いと思います。ところが、実際は常に『死』や『事故』と隣り合わせの世界なのです。
— 長谷川さん@PTスーパーバイザー (@PTsupervisor) December 2, 2019
どういうことかというと、この地球に生まれた以上、すべてのことはトレードオフの関係で成り立っています。
つまり、
我々理学療法士が提供するリハビリは
"リスク"を犯すから、"機能向上"という対価を得ることができているのです。例で示しましょう。
— 長谷川さん@PTスーパーバイザー (@PTsupervisor) December 2, 2019
骨折後の患者様を担当したとします。
手術をして骨折した骨は金属で固定しています。
これから骨が固くなっていく段階ですね。
金属が入っているとはいえ、骨自体は脆くなっています。しかし、リハビリはその段階でもしっかり提供されるのです。
— 長谷川さん@PTスーパーバイザー (@PTsupervisor) December 2, 2019
つまり、"弱った骨が再び折れる"
というリスクを犯してリハビリを提供するから"筋力向上"という対価を得ることができるのです。これが心臓リハだったらどうでしょう?
"弱った心臓で頑張る"というリスクを犯して、"体力向上"という対価を得ることになりますよね。— 長谷川さん@PTスーパーバイザー (@PTsupervisor) December 2, 2019
こうしてみると、
一歩間違えれば、リハビリを提供するということが『死』『事故』に繋がると容易に想像できますよね。どれだけリスクを犯してリハビリを提供するのか。
それによって目標達成への道は大きく変わります。
これから理学療法士になる学生さんは、そのリスクを知らなければなりません
— 長谷川さん@PTスーパーバイザー (@PTsupervisor) December 2, 2019
実習では理学療法士の"楽しさ"と同時に"辛さ"も感じて欲しいのです。
だからこそ、私もここから発信していきます。
少しでも身近に感じられるように、国試対策としても役立つよう工夫していくので、お楽しみにしていただけたらと思います。— 長谷川さん@PTスーパーバイザー (@PTsupervisor) December 2, 2019
理学療法士も常にリスクと背中合わせ
上のスレッドでもツイートしたように、我々がこの地球に生まれた以上、すべてのことはトレードオフの関係で成り立っています。
トレードオフ(英: Trade-off)とは、
一方を追求すれば他方を犠牲にせざるを得ないという状態・関係のことである。トレードオフのある状況では具体的な選択肢の長所と短所をすべて考慮したうえで決定を行うことが求められる。
Wikipediaより引用( https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%89%E3%82%AA%E3%83%95 )
これを理学療法士が提供するリハビリテーションに当てはめてみると、
"機能向上"という対価を得るためには、"リスク"を犯さざるを得ない状態である
ということになります。
これは理学療法士人生を全うするためには、常に心に留めておかなければならない考えです。
理学療法士も、言ってしまえば患者様と”信用”で成り立っている職業です。
ここが崩れてしまえば、効果は得られませんよね。
だからこそ、リスク管理を徹底していきましょう。
その信頼関係を崩さないために。
患者様に危害が加わらないために。
もちろん自分の身を守るために。
理学療法士が知っておきたい『医療安全』
あなたはこのサイトをご存知でしょうか?
公益財団法人日本医療機能評価機構HP( https://jcqhc.or.jp/ )
病院の医療安全委員会に所属している方の中には、このようなサイトがあるのをご存知だと思います。
しかし、多くの方はこのサイトを知らないのではないかと思われます。
むしろ、そもそも『医療安全』という言葉すら知らない、、、
なんとこともあるかもしれません。
なので、今後は『医療安全』の普及活動も兼ねて、こちらのサイトを参考にしながら配信していくので、以後お見知りおきを。
※私はこの団体に所属しておりませんし、関係もありませんからね。
公益財団法人日本医療機能評価機構について
以下HPより抜粋
設立趣旨
国民が適切で質の高い医療を安心して享受できることは、医療を受ける立場からは無論のこと、医療を提供する立場からも等しく望まれているところです。
公益財団法人 日本医療機能評価機構は、国民の健康と福祉の向上に寄与することを目的とし、中立的・科学的な第三者機関として医療の質の向上と信頼できる医療の確保に関する事業を行う公益財団法人です。
理念
私たちは、倫理と自律性を重んじ、中立的・科学的な立場で医療の質・安全の向上と信頼できる医療の確保に関する事業を行い、国民の健康と福祉の向上に寄与します。
価値
- 患者・家族、医療提供者等すべての関係者と信頼関係を築き、協働すること
- どこにも偏らず公正さを保つこと
- 透明性を確保し、社会に対し説明責任を果たすこと
- 医療の質・安全の向上を支援するため、科学的・専門的な見地から総合力を発揮すること
- より高い目標に向かって挑戦し続けること
評価機構について( https://jcqhc.or.jp/about )より
公益財団法人日本医療機能評価機構の事業
①病院機能評価事業( https://www.jq-hyouka.jcqhc.or.jp/ )
②認定病院患者安全促進事業( https://www.psp-jq.jcqhc.or.jp/ )
③産科医療補償制度運営事業( http://www.sanka-hp.jcqhc.or.jp/ )
④EBM医療情報事業( https://minds.jcqhc.or.jp/ )
⑤医療事故情報収集等事業( http://www.med-safe.jp/ )
⑥薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業( http://www.yakkyoku-hiyari.jcqhc.or.jp/ )
の6つがあります。
この中でも理学療法士として参考にしていきたいのが
②認定病院患者安全促進事業
④EBM医療情報事業
⑤医療事故情報収集等事業
の3つの事業です。
病院で働く理学療法士になるのであれば、是非とも知っておきたい事業となっています。
これまでに先人たちが経験してきた『医療安全』に関わる情報がたくさん掲載されております。
学生さんにとっては、④番のEBM医療情報事業なんかは、実習中にも役立つのではないでしょうか?
いろいろな疾患に対する最新のガイドラインが掲載されているため、手元に教科書や参考書がないときは参考にしてみても良いかと思います。
むしろ、このガイドラインをベースとして医療が提供されていますから、ブログを含め、信用性のないサイトをみるくらいなら、ここから情報を探すようにしましょう。
今回の記事では紹介までに留めておきます。
もし、興味があれば覗いてみてください!
最後に
これからの医療業界はリスク管理がとても重要視されていきます。
【他責的】な人であふれる世の中ですから。
平気で訴えられてしまう可能性がありますからね。
そうならないためにも、もちろん理学療法士人生を楽しむためにも、”科学的に正しい知識”をつけましょう。
それがあなた自身にとっての剣となり、盾となるのですから。
心してこの世界に飛び込んできてくださいね。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
引き続き『リハぶっく』をお楽しみください。