最近タスク量が増えてきていることもあり、日常生活をいかに効率よく過ごしていくのかをよく考えることが増えてきました。
そんな中、ふと、こんなことを思いました。
「いい文献になかなかたどり着かないな、、、」
よし。
そんな時のTwitter。
皆さまのお知恵をお貸しください!!
ということで、ほかの臨床家のみなさまはどうやって、文献検索をしているのかを伺ってみました!
【ゆる募】
文献を検索していると、やたらに時間がかかる…
欲しい情報にたどり着くまでに何個も読まなければならない…
どうしたら…
どんな工夫されていますか??
— 長谷川さん@PTスーパーバイザー (@PTsupervisor) December 19, 2019
そうしたらいろいろな工夫が出てくる出てくる。
効率よく文献にたどり着く方法はたくさんあるんですね!
そこで今回は教えてくださった方法も含めて、学生さんでも使える、『少しでも文献検索を効率よくするための方法』をまとめていきます。
実習中の文献検索に、かなりの時間を取られている方も多いのではないでしょうか。
以下の工夫を参考に、少しでも早くいい文献に出会えるといいですね!

なぜ文献を引用する必要があるのか?
ズバリ!
あなたの主張の根拠を示すためです。
先人の知恵が、あなたの意見の信頼性を高め、根拠のある主張にしてくれます。
学生さんはまず、以下のことを覚えておいてください。
学生であるあなた個人の意見は、いくら知識があったとしても、社会的にみれば”信頼性に欠ける”主張です。
どこぞのだれかも知らない人の主張なんて、誰も耳を傾けようとしません。
なので、社会的にもあなたの意見を支持してもらえるようにするためには、先人たちが築いてきた知識(研究結果やそこから生まれている客観的事実)を活用してみましょう。

社会的に信頼性の高い文献とは?
EBM(根拠に基づく医療)を謳う昨今では、引用する文献が社会的に信頼性のある”良質なもの”であることが重要になってきます。
つまり、学生さんが引用すべきは『教科書』や『ガイドライン』、『システマティック・レビュー』であり、『ブログ』や『Twitter』で発信している個人の意見ではいないのです。
ちなみに『参考書』は書籍化されているということで信頼性があると一般的に言われていますが、内容が個人の意見であることもありますので、吟味が必要です。
また、インターネットの論文検索サイトで出てくる論文には、研究方法や研究結果の集め方によって、信頼性の優劣があることを知っておきましょう。
以下、信頼性の高い文献を種類順に列挙していきます。
ただ、実習中に意識するのは上位の①~④だけで十分かと。
下位に行けば行くほど「どこぞの誰かもわからない人の意見」に近づくので、参照しないようにしましょう。
①ガイドライン(臨床指針)
②システマティック・レビュー(統計的総説)
③メタアナリシス(メタ分析)
④RCT(無作為化比較試験)
⑤非RCT
⑥コホート研究
⑦症例対照研究、横断研究
⑧症例報告
⑨個人の意見
⑩動物実験
※動物実験はヒトを対象としていないため、あくまで”仮定・仮説”であると認識されています。
※さらにそれぞれの中でもグレードがありますが、全部に触れるとややこしくなるため今回は省略させていただきます。
上記⑤以下の論文をどうしても参照したい場合は、
・筆者の情報(個人氏名や大学、政府機関等)
・発表年月日
・掲載場所(学会、出版社等)
によっても信頼性が変わってきますので、ご注意ください。

文献の効率の良い読み方
文献の構成を知ろう
文献を効率よく読むためには、まず文献がどんな構成で書かれているのかを知っておきましょう。
文献の構成を頭に描きながら読んでいくと、知りたい情報を見つける際に時間短縮できますよ。
多くの文献は以下のような構成で書かれています。
①タイトル
②筆者
③要旨
④はじめに
⑤研究内容(研究方法・結果)
⑥考察・結論
⑦おわりに
⑧参考文献
基本的にはこのような構成で書かれています。
欲しい情報のところに目星をつけて読み進めていきましょう。
文献の内容を把握をするために【要旨】を読み込もう。
文献を効率よく読むためには、【要旨】に注目してみてください。
【要旨】には、”この論文で主張したいこと”がまとまっています。
つまり、この【要旨】で大まかな内容を把握して、お目当ての情報かどうかをふるいにかけることができます。
【要旨】がない場合は、【はじめに】と【結論】を読んでみましょう。
その二つを読むだけでも、筆者の主張を知ることができます。
引用するときは、【要旨】もしくは【結論】から言葉を抽出しますから、最悪ここを読んでおけば参考文献としては活用できるでしょう。
【研究内容】は、、、学生さんにとってはあまり興味のないことかもしれませんね。
私はそうでした。
統計の専門用語が難しく、全く理解ができませんでした。

しかし、文献を読むクセがついてきたり、理学療法の科学的な面に興味がでてくると、【研究内容】にも興味がでてきます。
むしろ、そこが重要、、、と思えてきます。
なので、いま興味がなくてもかまいません。
今後興味を持ったら読み込んでいきましょう。
文献の効率の良い探し方 ~文献データベースを利用する~
文献データベースとはインターネット上に文献を掲載してくれているサービスのことを指します。
文献データベースには、検索機能があるため、簡単に文献を探すことができます。
その他、それぞれのサービスには便利な機能があり、より文献を探すときのハードルを下げてくれています。
そこで、以下に文献データベースの活用方法についてまとめていきます。
文献の効率の良い探し方 ~おすすめの文献データベース紹介~
現在、色々な文献データベースがあり、どこを利用して良いのかわからない状態に陥っています。
私が把握しているだけでも20以上の文献データベースがあります。
なので、この記事では"私が個人的によく利用させてもらっている文献データベース"を紹介していきます。
『ガイドライン』の探し方
Minds(マインズ):厚生労働省委託事業である日本医療機能評価機構がまとめる疾患別の診療ガイドラインのライブラリ。
PEDro(ペドロ):世界中の理学療法領域における文献データベース。診療ガイドライン、システマティック・レビュー、RCTの情報を提供。ただ、日本語訳されていますが英語単語で検索しなければならない。

『論文』の探し方
Google Scholar(グーグル スカラー):Googleが提供する文献のデータベース。
J-STAGE(ジェイ ステージ):文部科学省所管の独立行政法人科学技術振興機構が提供する文献のデータベース。
CiNii(サイニィ):国立情報学研究所が提供する文献データベース。
Pubmed(パブメド):米国国立医学図書館が提供する世界中の医学系文献のデータベース。英単語で検索する必要がある。
どのサイトでも資料によっては一部有料のものがあります。
それを閲覧するためには、契約料金を払わなくてはなりません。
しかし、養成校によっては"学区内で検索しているとき"は、閲覧権限が与えられている場合もあります。

職場で契約している…というところもあるようです。
ただ、かなりレアだと思います。
臨床家の多くの方は無料で読める範囲でも十分に活用できるため、無契約だと推測されます。
文献の効率の良い探し方 ~検索キーワードの絞り方~
『PICO』について
文献を検索するときに、入れるキーワードが曖昧だと、膨大な数の文献が出てきてしまいます。
それを防ぐために、あらかじめ自分の知りたいことを整理しておくことがポイントなります。
その方法が『PICO』です。
『PICO』とは?
『PICO』は どんな患者様に、どんな治療介入をすると、どんな人と比較して、どんな結果になるのか の頭文字です。
この要素で調べたい文献を探していくと、検索する際に曖昧な表現にならず、的確に情報を検索することができます。
なので、学生さんは検索する前に、この順番をイメージしておきましょう。
Patient:患者様
Intervention・If:治療・条件
Comparison:比較対照
Outcome:アウトカム
例えば、
「大腿骨頸部骨折後の患者様に対して、全荷重からスタートするのと、部分荷重からスタートするのとで、予後に差があるのか?」
というふうに疑問を思い、文献を探すことになったとします。
J-STAGEにて[大腿骨頚部骨折 全荷重 部分荷重 予後]と検索してみます。
すると、36件ヒットしました。
36件なら【タイトル】でもさらに絞れますから、欲しい情報がすぐに見つかりそうですね。
ちなみに、キーワードを絞らずに[大腿骨頚部骨折 予後]だけで検索すると、684件もヒットしてしまい探すのを諦めたくなるレベルとなります。
これでは時間がかかって仕方がないですね。。。
このようにPICOで定式化しておくと、文献も探しやすくなるでしょう。
とはいえ、選択肢の少ない学生さんにとって”比較対照”を考えるのは、苦渋のことかもしれません。
なので、慣れないうちは[治療するのと、しないのと]の比較をしてみても良いかもしれませんね。
文献の効率の良い探し方 ~検索キーワードの言い換え~
一般的に使われている言葉と、専門用語とでは検索に引っかかる件数が異なる場合があります。
より専門的な言葉に置き変えたり、もっと範囲の狭い意味を持つ言葉に置き換えたりしてみましょう。
例えば、
老人 ⇔ 高齢者
脳血管疾患 ⇔ 脳梗塞
治療 ⇔ リハビリテーション
など。
うまい具合に検索に引っかからないことも多々ありますから、そんなときは色々な言い換えで検索してみてください。
文献の効率の良い探し方 ~文献データベースの便利機能紹介~
文献データベースの『詳細検索』機能について
効率よく文献を探すための工夫として、『詳細検索』機能があります。
『詳細検索』では、キーワードを羅列するだけの『簡易検索』とは違い、広範な条件からお目当ての情報にたどり着きやすくするために、情報を絞っていくことができます。
それぞれの文献データベースでやり方や機能は違うので、詳細はそれぞれのサイトをご確認ください。
文献データベースの『フィルター』機能について
効率よく文献を探すための工夫として、『フィルター』機能があります。
資料の種類や査読の有無、有料無料、分野、発行年、ライセンスなど、検索するうえでフィルターにかけておくことで、除外項目をあらかじめ設定することができます。
文献データベースの『限定検索』機能について
絞り込み検索[”○○”]
:言葉も順番も完全に一致する検索結果が得られます。
~例~
[”大腿骨頚部骨折とは”]と検索すると、「大腿骨頚部骨折とは」からはじまる結果が表示されます。
除外検索:[○○ -××]
:検索結果から××に該当する言葉を除外した検索結果が得られます。
~例~
[大腿骨頚部骨折 -原因]と検索すると、大腿骨頚部骨折の治療法が多く検索されていました。

AND検索[○○ AND ××]
:検索した言葉を含む検索結果が得られます。スペースを空けて検索するよりも明確に絞り込めます。
~例~
[大腿骨頚部骨折 AND 上腕骨近位端骨折]と検索すると、転倒に関する文献が多く検索されていました。

OR検索[○○ OR ××]
:検索用語いずれかの言葉を含む検索結果が得られます。これを使うと検索される範囲が広くなります。
~例~
[大腿骨頚部骨折 OR 上腕骨近位端骨折]と検索すると、上位に上腕骨近位端骨折の治療に関する文献が検索されました。

NOT検索[○○ NOT ××]
:NOT直後の言葉を含まない検索結果が得られます。
~例~
[大腿骨頚部骨折 NOT 上腕骨近位端骨折]と検索すると、大腿骨頚部骨折のみが検索されていました。

文献データベースの『メールアラート』機能について
上記に紹介した中では、Google Scalar、PubMed、PEDroにある機能です。
登録した用語や分野に該当する新しい論文が各文献データベース上に掲載された際に、自動的に通知してくれる仕組みのことです。
メールやSNSでも受け取り可能となっています。
通知頻度も設定できます(週1回をおすすめします)。

実習前なんかは、設定を変更して、実習地に関連しそうな用語や分野を選択しておけば、自然と情報が集まるので便利ですね。
文献の効率の良い探し方 ~文献に使われた参考文献を検索する~
参考文献を探して論文を読んでいると、その論文の最後には必ず参考文献が添付されていることに気がつきます。
そこに掲載してある文献は、論文から引用されるほどの文献ですから、信頼性は高いと判断してもよいでしょう(ちゃんと確認は必要ですよ!)。
多くの論文は「原典を肯定するような研究をした結果」or「原典を否定するような研究をした結果」を主張としています。
つまり、原典にこそ、あなたが求める情報が載っている可能性がありるのです。
欲しい情報がないからと再検索するよりも、載っている参考文献を読み漁ったほうが早く欲しい情報にたどり着けることもあります。
※『孫引き』といって、文献中の"他文献から引用された文章"を、あなたがそのまま用いることは、研究者の間で”絶対タブー”とされています。参考文献の原典を検索し、あなたもそこから引用するようにしてください。
文献の効率の良い探し方 ~文献の筆者をサーフィンする~
名前をよく見かける筆者を検索したり、いい文献だと感じた文献の筆者を検索したり、、、など、筆者に着目して検索する方法です。
筆者にとってその分野の論文を書くということは、自身の臨床においても相当力を入れている分野でしょうから、その筆者を追って検索していけば、その分野を多方面からみた詳しい情報が得られるかもしれません。
各分野には権威と呼ばれている方がいらっしゃいますから、その方の名前で検索してみても欲しい情報にたどり着きやすいです。
もし、権威の方の名前を知らなくても、その分野の文献を3つくらい読み、参考文献の一覧をみれば、だいたい同じ名前の人が羅列されていますから、そこを参考にしてみても良いかと。
以上が効率良く文献を探すための方法となります。
いかがでしたか?
今回この記事をまとめるために色々な方法を調べてみて、簡単に文献を効率よく検索することができることを知りました。
まだまだ方法はありそうなので、また効率の良い方法を見つけたらシェアしていきますね。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
引き続き『リハぶっく』をお楽しみください。