「あきらめる」という言葉のイメージ
世間的に「あきらめる」という言葉はマイナスのイメージがあると思います。
例えば、
”逃げた”
”妥協”
”我慢”
”負け”
などのようにあまりよくないイメージのある言葉が連想されてしまいますよね。
医療従事者の中でも、「あきらめる」ことがあたかも大罪であるかのように回避しようとしている人がいます。
リハビリ中も「あきらめないで!」と声をかけている先輩方をみてきました。
と同時に、患者様がいい顔をしていない場面もときにはみてきました。
そんなとき思うのです。
「あきらめる」ことってダメなことなのでしょうか?
中にはそうだといえることもあるでしょう。
しかし、全てにおいて「あきらめる」ことが、ダメだとは言えません。
今回の記事では、『時に「あきらめる」ことで人は成長できる』ということを示していきます。
※決して日本理学療法士協会の『笑顔をあきらめない』に対する批判ではありませんので悪しからず。
【あきらめる】
人は歳を取るにつれて『あきらめる』ことが多くなっていく。
夢、希望、身体能力、食事、笑顔、、、
そして、命をも。
果たして、それを理学療法士は取り戻すことが仕事なのだろうか?
それとも、、、??
考えてみよう。
— 長谷川さん@PTスーパーバイザー (@PTsupervisor) December 24, 2019
「あきらめない」とは、保身行動のことである
「あきらめない」というのは、ある種の保身行動です。
”既存の枠組みからはみ出すことが怖い”という気持ちの現れであることもあります。
AKBの第一期生である峯岸みなみさんが、これまで卒業せずに残留していたのもこの一種かもしれません。
AKBという肩書きをあきらめてしまうと、自分は何者になるのだろう。。。
これまでAKBブランドの自分は注目されてきたけど、そのブランドがなくなった時に果たして、注目されるのだろうか?
そうなったとき自分の未来はどうなるのだろうか?
そんな”恐れ”の気持ちもあったのかもしれませんよね。
たしかに、AKBという巨大なブランドがなくなれば、例え大成功を収めたとしても、AKBほどの成功とは思えないでしょう。
なので”怖い”と思って当然なのかなとも思います。
また、高齢者のように、体力が落ちてできないことが増えた場合には、『老人への一歩』を踏み出したくないという気持ちもあるかもしれません。
”なにかを「あきらめる」のは年寄りの証拠である”という偏見から、”老い”を隠すために無茶をしている方も少なくありません。
「まだ若いもんには負けちゃおれん!」
その気持ちもとても大切なものです。
しかし、高齢者ドライバーの事故が連日報道されているように、「まだ大丈夫」という気持ちを持ち続けた結果、自らの人生だけでなく他人の人生をも滅ぼすことにつながってくるケースもあります。
「あきらめない」という一人のエゴで、無関係な他人にも迷惑をかけてしまうのです。
このように「あきらめない」ことで、今ある地位や尊厳を保つことができます。
その反面、今ある自分の殻からは広がることができないため、新しい自分には出会えないことにもつながっているのです。
その殻がもともと広ければよいのですが、そうでない方もたくさんいらっしゃいます。
特に障害受容の進まない患者さんは典型例ですよね。
そんな方が「あきらめない!」と豪語していたとしても、本人以外の人からは”もったいない”と思われるだけです。
何かを手に入れるためには、何かを捨てなければならない。~空白の法則~
人は、何かを手に入れるためには、何かを捨てなければなりません。
これは「空白の法則」といって、宇宙の原理原則にも基づいた考え方です。

例えば、よくこの法則で出てくるものとしては、
コップに入ったジュースを思い浮かべてみてください。
新しいジュースが飲みたいのに、コップの中にはすでに入っている。。。
そんなときは、”飲み干す”or”捨てる”ことでコップの中身を空けますよね。
だからこそ、新しいジュースを飲むことができるのです。
といったようなことが挙げられています。
たしかにそうですよね。
また、"性"に関しても法則が当てはまると言われています。
幼児期は"性"の自覚をし始める時期ですよね。
それは例えば、娘がお風呂をパパと入った際に、"アレ"をみて「私にはないものがある」という自覚をした瞬間であると言います。
そうして、自分と違う"性"があることを知るのです。
これも成長するためには必要な自覚ですよね。
もっと、我々に身近な例で言えば、
新しい分野の勉強をしたい!
と思ったら、それに費やす時間やお金を捻出しますよね。
そのために、今やっている勉強に費やす時間や娯楽の時間や睡眠時間などを削らなければなりません。
※睡眠時間を削るのは逆に効率が落ちるパターンですから絶対にやらないように!!
また、生活費、交際費、食費などを切り詰めていく必要もあります。
このように、今ある時間やお金を”捨てる”ことで、新しい知識が得られるのです。
なので、「あきらめる」ことでみえてくるものもたくさんあるのです。
逆にいえば、「あきらめない」ことでみえていないこともたくさんあるのです。
どちらが良いか、、、
それに関してはやってみなければわかりません。
しかし、経験者や知識人からみて、「あきらめる」ことで、よい結果につながるとアドバイスされたのであれば、やってみても良いかもしれませんよね。
蛇足ですが、、、
正直、私もこの手の本を何冊か読んで、胡散臭くて拒否反応がありました。
しかし、徐々にその考え方に寄ってきてしまったというか、、、
汚染されてきたというか、、、笑
とにかく、生きていくなかで、当てはまることが多すぎて、紹介しておかなくては!と思い、今回思い切って記事に載せてみました。
ちょっと興味のある方は、こちらの本をおすすめしておきます。
読み始めは、なにをいっているのかわからないこともあるのですが、ふと、自分の生き方を客観視したときにボディーブローとして効いてきますよ 笑
☝これも胡散臭いという固定観念を「あきらめる」ことで得られるもの、、、かもしれませんね!
「あきらめる」ことのメリットとは?
つまり、人は「あきらめる」ことで、以下の3つのメリットを享受することができます。
①新しい自分に出会える
②可能性を広げることができる
③選択肢を広げることができる
これが「あきらめる」ことのメリットです。
人は「あきらめる」から成長することができるのです。
そして、「あきらめる」の二次的な恩恵として、
『自信につながる』
『気が楽になる』
ことも挙げられます。
新しいことを取り組む際は、とてもモチベーションが高くなりますよね。
それが一時的なことであっても、なにかに集中的に取り組んだという事実は、自分史に刻まれるべき大きなイベントです。
こうしたイベントがのちのち、自信につながっていきます。
また、これまで頑張りすぎて、目の前のことすらも見えなくなってしまっているときには、「あきらめる」ことで、ゆとりを持つことができ、気が楽になるものです。
煮詰まれば煮詰まるほど、人は視界が狭くなります。
そんなときは、「あきらめる」ことを通じて、視野を広げることもしてみるとよいでしょう。
「あきらめない」派の意見も多数ある!
パナソニック(旧松下電器)を急成長させた”経営の神様”である松下幸之助さんは「簡単にあきらめてはいけない」と言います。
また、スラムダンクでお馴染みの安西先生は「あきらめたらそこで試合終了ですよ」と言います。
あのウォルト・ディズニーでさえも「夢を求め続ける勇気さえあれば、すべての夢は必ず実現できる。いつだって忘れないでほしい。すべて一匹のねずみから始まったということを。」とあきらめないことの重要さを解いています。
たしかに、有名な人も「あきらめない」ことを推奨している事実があります。
私も「あきらめない」ことの重要性は重々承知しています。
ただ、だからといって、目の前のこともやらずに、無謀なチャレンジ、夢想家気取りを続けていても仕方がありません。
これらの方々は、この発言に至るまでにそうとうな数の try & Error や地道な積み重ねがあったことは間違いありません。
そうした時間を過ごしてきたからこそ、これらの発言が意味を成しているのです。
つまり、これらの成功人が言いたいことは、
『強い信念や軸を「あきらめる」ことはしない方が良い』
ということであって、
『そこに至るまでの選択は「あきらめる」ことも必要である』
と解釈できます。
「あきらめたくない」人が「あきらめる」ためのマインド
とはいえ、人によっては目先のことが人生において大きな決断であると感じる場合も少なくありません。
むしろ、大半の人がそう感じているでしょう。
そんな方も次のことを実践してみてください。
①「あきらめる」ことで得られるものについて徹底的に調べる
「あきらめる」ことで得られるもののメリット・デメリットを比較してみましょう。
”怖さ”は”無知”からくるものが大半です。
知らないからこそ、怖くなるのです。
なので、その”怖さ”を解消するためにも、調べてみましょう。
案外簡単に”怖さ”は薄れていくかもしれません。

②”もったいない”という考えを捨てる
特にお金にいえることです。
これまで○○万円もかけてきたのに、、、
せっかく大学出たのに、、、
気持ちはわかります。
日本人は戦後の教育で”もったいない”精神を学んできたのですから。
しかし、今は消費社会。
時代は変化していっています。
お金についてはアレコレ言える立場ではありませんが、もう出て行ってしまったお金に未練を感じても、、、
結果的にプラスになるような取り組みをしていけばよいだけなので、一時的なマイナスはモチベーションの一つとして考えていきましょう。
③「あきらめる」ことで成長した自分をイメージする
今足かせとなっている考え方をとっぱらって、成長した自分をイメージしてみましょう。
「あきらめる」「あきらめない」どちらを選択したにせよ、道中で困難が待ち受けているのです。
「あきらめる」道を選んだ時の最終到達地点で、自分がどんな表情・感情でいるのかを想像してみましょう。
そのイメージが強ければ強いほど、あなたは必死になれます。
だってそうなったら、必死にならざるを得ないのですから。
④「あきらめない」ことを「あきらめる」
これは自暴自棄に近いかもしれません 笑
もはや、強引に、ノリと勢いで、「あきらめちゃえー!」笑
うだうだ言っても埒があきません。
「これも運命か、、、」
と身を委ねてみましょう。
そんな人生もいいと思います。
少なくとも、スタートは切れますから。
そして、スタートを切ってしまえば、やるほかありません。
意外と「そうして無計画・無鉄砲に挑戦した結果、良い方向に向かった!」というエピソードもよく聞きます。
なにがきっかけかなんてのは、わからないものです。
そして、きっかけなんてなんでもいいのだと思います。
『人生そんなもん』
なのかもしれませんね。
「あきらめる」「あきらめない」問題は、非常にセンシティブな問題
ここまで「あきらめる」ことのメリットを重点的にまとめてきましたが、「あきらめる」「あきらめない」という問題は、非常にセンシティブな問題でもあります。
あなたの軸のみで評価するのは、とても危険なものです。
なので、もし、あなたがアドバイスをする側であるならば、その相手とある程度は心許せる関係性になっていることが重要です。
言葉の使い方だけではなく、言葉では足りない繊細なニュアンスが重要になってくるからです。
「あきらめないで!」
これを言われる身にもなってみましょう。
言われる側にとって、たった一言ですが、とっても辛く、重くのしかかってきます。
増して、それが関係の浅い人から言われたら、、、
アドバイスではなく、否定されたような気持ちにもなりますよね。
「あきらめる」というのは、本人の中では相当な決断であることが少なくありません。
なんでもかんでも「あきらめよう!」と声をかけないように、気をつけていきましょう。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
引き続き『リハぶっく』をお楽しみください。
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