はじめに
今回の記事は先日書いたこちら↓の続きのような位置づけです。
まだお読みでない方は、こちらから読んでいただけると内容の理解も深まるかと思います。
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元気でいたけりゃ、病衣を着るな。
どうも、長谷川元気です。 私は当サイト『リハぶっく』の管理人です。 現役病院勤務の理学療法士をしています。 当サイト ...
上の過去記事を大雑把にまとめると、病衣はヒトを心まで病人にしてしまうので、なるべく着ない方が元気に過ごせますよ!というものになっています。
今回の記事では、病衣を着続けたことで、心まで病人となってしまった末路のことについて触れていきます。
患者様を【病人】のまま退院させてはならない。
「介護を受ける」その前に注意しておきたいこととして、
「患者様を【病人】のまま病院を退院させてはいけない」
このことを話の中心に進めていきます。
人は病気を発症してしまえば、入院を余儀なくさせられてしまうことがあります。
「入院はいやだな。。。」
こう思っている段階では、まだ元気でいられる可能性が高いと言えます。
というのも、心までは【病人】とはなっていないからです。
しかし、病衣を着たその瞬間から、ヒトは【病人】となる準備を始めます。
病衣をみるたびに【病人】となっていき、ついには心までもが【病人】となっていきます。
それと並行して、医療従事者からは”患者様”として扱われることで、自分が【患者】であることを認識していきます。
つまり、自分の中に【患者】という役割を作り始めるのです。
そうして【患者】である時間が長くなれば長いほど、みな同じような【患者】の顔つきに。。。
これってあまり良い傾向ではないのは、おわかりでしょうか。
【患者】のまま退院すると役割を全うしなくなる。
例えば、入院前のADLと変わらないレベルで自宅復帰した患者様がいたとします。
その方は退院後の生活において、今まで家で担当していた役割を、これまで通り割り当てられることが多いですよね。
その時に、その方が【患者】のまま退院したとしたら、その役割はどうなるでしょうか。
本人はどこかしらで【患者】である自分を理由に、これまでの役割をおざなりにしてしまう可能性が高くなってしまうのです。
実際に何例もの患者様がそうなってしまい、家族も本人も辛い想いをしているという相談を受けることがあります。
そういった方の多くは入院をきっかけに【患者】になりきってしまい、家でも【患者】としての役割から抜け出すことができなくなってしまっているのです。
これではなんためのリハビリテーションだったのか、なんのために家に帰ったのか、わからなくなってしまいますよね。
退院はゴールじゃない。その先の生活を考えよう。
医療者全般に多いのが、自宅復帰を治療の目標と挙げることです。
しかし、ご本人にとっても、ご家族にとっても、家に帰ってきて終わりではありません。
そこからの生活が待っているのです。
どんな形で自宅復帰をするのか、その質を求めておかなければなりません。
介護をするにあたっての心の変化を知っておこう。
また、入院前ADLより大きくレベル低下してしまって、介護が必要になっていても家に帰った場合には、さらに注意が必要です。
一般的に《介護》のイメージはあまり良いものではありませんよね。
そのワードを聞くだけでも、うんざりしてしまう方もたくさんいるのです。
そんな中で、入院前までは【家族】であった人が、急に【患者】として帰ってきて、《介護》される人となってしまうのです。
ご家族の方はそれをどう感じるか、考えたことはありますか?
もちろん、その捉え方はご家族によって多様です。
《介護》する家族に対してリハビリテーション職ができること
そのため、介護するご家族のことを少しでも考慮することが大切ですよね。
そこで、我々セラピストができることの一つとして、患者様の中にある【患者】という役割を少しでも減らしておくことが重要となるのではないでしょうか。
患者様が自宅へ帰っても【患者】であるスタンスを取っていると、家族の介護負担はさらに増えてしまい、精神的にも肉体的にも辛い結果になりかねません。
というのも、家族は”医療スタッフ” ”介護スタッフ"ではないのです。
あくまで【家族】なのです。
そこには長年築いた関係性もありますが、何を言ってもいいわけではないと思います。
特に《介護》となるとより話は別のものになっていきます。
病院ではどんなひとでも患者様として受け入れるでしょう。
そして【患者】である患者様を理解しようとし、手を過剰に貸してしまうこともしばしばです。
でもそれは、その方がその人らしく生活できるように配慮し、医療従事者というその道のプロが援助や介護を行なっている結果です。
この環境は患者様にとっては、さぞかし居心地の良いものでしょう。
自分の思い通りにいく環境がそこには用意され、思い通りにいかなければ、配慮してもらえます。
素晴らしいと感じてもおかしくないですよね。
しかし、これは病院という特別な空間であるから成り立っていることであって、自宅でこのような援助や介護は受けることができません。
このギャップを埋めることをしないと、自宅復帰したところで、その退院は誰の為でもなくなってしまいます。
患者様が家族の前でも病院に入院しているときのようなスタンスを取ってしまうと、家でも"やってもらう"ことが当たり前となります。
ご家族にとってはこの精神を持たれることが一番辛いという人もいるくらいです。
介護側のプライベート時間もありますからね。
そして全ての人が献身的に介護をしているわけではありません。
たしかに家族とはいえ、社会的にみたら弱者と言わざるを得ない状態でも、そこに【患者】を前面に押し出した横柄さがみられれば、介護側の不満は溜まる一方です。
不満が溜まれば人間誰しもどこかで吐き出さなければ、いつか爆破してしまいます。
その結果、よくニュースで見かけるような介護拒否や暴力行為などに繋がっていくケースも少なくありません。
それを防ぐためにもリハビリテーション職として退院に携わっていくのであれば、『退院後の生活』にもフォーカスを当てるべきです。
最後に
残念ながら、介護はどんな人でも円滑に受けられるわけではありません。
それにはお互いのことを想う心が必要です。
あなたが携わった患者様は、【患者】である前に、【家族】であり【ヒト】なのです。
リハビリテーションに携わる人がそこを忘れてしまうとよくない結果になることは間違いありません。
入院した方が【患者】となりたくなる気持ちもお察しします。
「あなたもそれだけ身体も心も辛いんだよね。」
家族の人もどこかで必ずそう思っています。
ただ、介護側もそんなことわかってはいても、不満が爆発してしまえば、衝動的な行動に走ってしまうこともあるでしょう。
そうすれば、介護する側もされる側も辛い思いをしてしまいます。
それだけでなく介護側は一生後悔するでしょう。
介護は人間関係が崩れるきっかけと容易になりえます。
介護する側が気をつけることもたくさんありますが、介護される側もたくさん気をつけておかなければならないことがあります。
今回はその一例を示しました。
自宅復帰した際に、【患者】の役割を極力なくしておくことがご家族にとっても、良い影響をもたらします。
そのためには、入院期間中、病衣を着る機会を極力減らして、心まで【病人】とならないよいうに気をつけてみましょう。
セラピストとして、そこまで考えて初めて、”自宅復帰”と自信を持って言ってよいでしょう。
いろいろな方法を使って患者様を【患者】としないようにリハビリテーションしてみてくださいね。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
引き続き、『リハぶっく』をお楽しみください。
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