先日、こんなツイートをしました。
CCSでは見学実習がとても重要な位置付けになります。
患者様に触れる機会が少なくなる可能性が高くなるため、"自ら学ぶ姿勢"がないと、時間を浪費するだけ…
「指導者が言ったことをメモる」
だけでなく、
『もし自分がセラピストだったら…』
という視点で見学ができるとなお良し。— 長谷川さん@PTスーパーバイザー (@PTsupervisor) November 16, 2019
ということで、今回は私がオススメするCCS(クリニカルクラークシップ)での見学の方法をまとめていきます。

従来型の実習はボトムアップを利用していた。
まずは従来型の実習とCCS(クリニカルクラークシップ)での実習との違いを知っておきましょう。
これまでの実習では、学生さんは患者様に対して評価をして、その結果を統合し、分析した上で考察を行なっていました。
いわゆるボトムアップの考え方ですね。
このボトムアップという考え方は、たくさん考えられる仮説を絞っていく方法です。
評価した項目が多ければ多いほど、仮説を絞ることができます。
そのため、自分の考えをまとめやすく、また、自信を持ちやすいため、学生さんにとっては考えを深めやすい方法でもあります。
しかし、これからの実習体制(CCS:クリニカルクラークシップ)では、このようなボトムアップで考える機会が少なくなります。
というのも、患者様と一対一で接する機会が少なくなる可能性があるのです。
今までは患者様を"担当"するかのように、学生さんが評価を行っていました。
しかし、CCSでは診療の補助の範囲でしか患者様と触れる機会がなくなります。
またレポートの作成もなく、発表する機会もありません。
そのため、学生さんにとっては、自分の意見を披露し、それに対してのフィードバックをもらう機会が少なくなります。
つまり、学生さんはこのやり方を悪用すれば、、、
自分でなーんにも考えなくても実習を過ごせるとも捉えることができるのです。

臨床家はトップダウンで考えている。
では、なぜそのような体制になったのかというと、臨床の現場においては、学生さんが実習で行っていたようなボトムアップでの掘り下げ方をしていないという意見もあったからだと推測しています。
たしかに指導者が治療をする際は、トップダウンで掘り下げて仮説を立てています。
でも、そこに至るには長年培った知識と経験があるからであって、臨床へでたから急にボトムアップでなくなったというわけではありません。
我々も、新人時代は指導者のように仮説をたくさん立てられていたわけではありませんから、手探り状態で(つまり、ボトムアップ)で行っていました。
それが自分の身を守るためでもあり、患者様と向き合う中での最良の選択だったからです。
しかし、指導者くらいの経歴を経れば、学生さんに指導するときには、仮説を絞ることができてくるため、トップダウンで行うことができてきます。
そのため、学生指導では1つの仮説のみを伝えることができるのです。
学生さんにとっては、それが"答え"であるかのように感じますよね。
しかし、注意しておきたいのが、その”答え”だけをきいていたのでは、あなたが臨床にでたとき『使えない知識』となっています。
なぜなら、仮説の幅がすでに狭まった状態での見解を聞いているからです。
その"答え"である1つの仮説に至るまでには、これまでその指導者が得てきた知識や経験などによって、たくさんある仮説を減らすという過程が必ず存在します。
その過程こそが、臨床においてはとても重要なのです。
以前、Twitterで1つの仮説を立てるまでに必要な評価項目が多い人は、臨床家からみてもスゴいと思うと発信しましたが、そこにはもう一つのスゴさが隠れています。
それが、
『仮説を絞る前に、どれだけ多くの仮説を立てることができるのか』
これも臨床家の腕の有無を左右します。
膨大な数の仮説の中から、膨大な量の評価項目をあげて、1つの仮説へと導くことができるセラピストは本物の実力者です。
しかも、このレベルの人って、その膨大な知識量を処理する能力も飛び抜けており、1つの仮説にたどり着くまでの時間も極端に短い印象です。
ここまで到達できれば、セラピストからも尊敬の眼差しを向けられ、一目置かれるような存在となり得るでしょう。
ただ、実習ではそんな人に出会うことは滅多にありません。
たしかに、ごく少数の指導者は、いくつも立てた仮説を指導した上で、それを打ち消していく工程(評価)も指導してくれる方もいます。

しかし、多くの指導者はそこまで丁寧に指導することはありません。
なので、受け身で指導者からの言葉を受け取っているだけでは、仮説の本数が少なく、応用も効きにくいため、臨床にでたときに困るのです。
繰り返しになりますが、いくつもある仮説を絞っていく前の過程から指導してもらうことが、臨床向けの知識を得ることができるか否かを決めます。
見学したことを臨床でも使える知識にするための工夫をしよう
とはいっても、多くの臨床家は"答え"だけを聞いて育ってきているので、臨床家になれないわけではありません。
ただ、スタートでつまずく人は多発している印象です。
しかも、厄介なことに、中には、1つの仮説すらも指導してくれない指導者もいます。
そうなってくると、『触らない』・『教わらない』・『ボーッと見てるだけ』の実習ともなりかねません。
そんな実習を過ごすのは時間の無駄でしかありませんよね。
臨床力を高めるためにも、時間を有意義に使うためにも、学生さんはこれまで以上に見学のしかたを工夫しなければなりません。
CCSでの見学方法の工夫①『5つのポイントをメモる』
以前書いたこの記事「【これでOK】見学実習で最低限みておくべきポイント5つ」も私がオススメする工夫の一つです。
詳細はそちら👆👆👆をご参照ください。
CCSでの見学方法の工夫②『指導者が行っている治療を自分の身体に見よう見まねでやってみる』
指導者の考え方を知るために有効な工夫です。
またCCSでも推奨しているように、『見学→模倣→実践』の"模倣"段階へと進むこともできるため、積極的に取り入れたい工夫です。
どこにアプローチしているのか、どんな効果があるのか、どんなところに注意した方が良いのか。
見ているだけではわからないこともたくさんあります。
・治療箇所と同じところを触ってみる。
・指導しているトレーニングを自分もやってみる。
・介助方法をシャドーで真似してみる。
など。
実際に行っている治療を、身体に刷り込むように真似をすることで、ただメモをしているよりも何十倍も多くのことを学ぶことができます。
真似をすることで、指導者が行う治療の目的や細やかな配慮や工夫が見えてくることもあります。
やはり、経験に勝るものはありませんね。

CCSでの見学方法の工夫③『自分が担当した時のことを考える』
※これは評価実習の学生さんには少し難しい内容かもしれません。
学生さんの中には、ここまでのレベルにまで到達できない人もたくさんいますから、焦らずに読み進んでみてください。
もし、自分が対象者の方を担当したらどう考えるのかといった視点で見学してみてください。
自分が担当するとなると、真剣味がより加わりますよね。
あなたの判断1つでその対象者の人生が変わるのですから。
まず担当するとなると仮説をたくさん立てる必要があります。
ただ見学では、事前情報も少なく、実際には触っての評価ができないため、動作の評価からトップダウン的に仮説を立てることしができません。

ということで、せっかくの機会ですから、トップダウンのスキルアップを図ってみましょう。
対象者の動作から考えられる仮説をできるだけたくさん立ててみてください。
また、その上で指導者が行っている治療箇所をメモしておきましょう。
そして、質問タイムの時にあなたが立てた仮説と、指導者の立てている仮説を照らし合わせてみてください。
もちろん、この時は指導者の考えを真っ向から否定するように質問してしまうと反感を買ってしまうので、あくまで指導者の考え方を尊重しながら意見を伺うようにしましょう。
例えば、
「先生の治療箇所から推測すると、〇〇に対してアプローチしているように見受けられました。それは〇〇という動作から〇〇という問題点が挙げられるからですか?」
とか、
「私は△△といった動作や△△といった所見から、△△という仮説を立てました。先生の治療箇所をみても、△△にアプローチしているようにみえました。ただ、××といった所見をみると××も問題点であるとも考えられたのですが、先生のお考えを伺いたいです。」
などのように質問してみましょう。
このように質問することで、ちゃんと患者様のことも、指導者のことも見学していたことを伝えるチャンスともなります。
必ず、指導者の考え方を推測したうえで、自分の考えを伝えてみてください。
これは臨床家同士で行われている議論となんら変わりありません。
なので、私はここまでのレベルで見学ができれば、"臨床家の卵"としての自覚が備わったと判断しています。
指導者になって思ったのは、このレベルで学生さんと話せたら、指導者としては嬉しくも、頼もしくも思えますね。
以上、CCSで取り入れたいオススメの見学方法でした。
まとめ
ここまで3つの見学方法を紹介してきましたが、どれも共通しているのが『自ら学びにいっている』という点です。
実習に限らず、学校の授業や国試の勉強、読書なども受け身で知識を求めようとしても、多くの知識は身についていきません。
一番知識が着くのは、興味があって、好きなことです。
しかし、実習のときにはそこまでの気持ちになっている学生さんは多くありません。
まだどこか他人事なのです。
とはいえ、一部の有望な学生さんはそこのレベルまで達しており、そんな学生さんと受け身の学生さんとでは、伝える内容も話す知識の質も全く異なります。
臨床家のスタートラインは学生時代から違っているのです。
私は臨床家になって、指導者になって初めてそのことに気付きました。
この記事をみて、あなたがどう思うかはわかりません。
しかし、これを機に、見学実習の方法をもう一度見直してみるきっかけになれば幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
引き続き『リハぶっく』をお楽しみください。